真夜中に

しんでもきみだよ、99。

初恋





ヘヘッって笑い方、そう笑ったら覗く八重歯、独特なテンポのトーク、みればみるほど浮き出る無邪気さ、当たり前のようにする努力、片方だけ尖った右耳、左耳ばかりつけてるピアス、綺麗な平行二重、右の頬骨にあるほくろ。壁ドンの立役者、



国宝級イケメンと呼ばれるほど人気者になるずっと前、8年前のあるドラマの黒幕役だった彼。


いつの間にか彼の出演する番組を録画して見るようになった。自分の誕生日ですら泣いたことがなかったのに初めて人の誕生日で泣いた。ファースト写真集を発売するというニュースをみて初めて写真集というものを買った。初めて持たせてもらった携帯の壁紙は写真集の中で1番お気に入りの写真だった。彼が主演の映画を観に行った日、初めてパンフレットというものを買った。その年、初めて日本アカデミー賞を見た。



とにかく、何をするにも初めてだらけだった。


彼の存在を知ってから数ヶ月後の19歳の誕生日、おめでとうの言葉と一緒に涙が溢れた。




まぎれもなく、わたしの初恋だった。







3年前、わたしも気づかなかった心の傷に気づいて手をひいてくれる人たちに出会った。わたしの人生も考え方もぜんぶ丸ごと変えてくれる人たちに、出会ってしまった。運命の分岐点だった。




真っ赤な髪の儚さと脅威を持ち合わせた特別なひとに一目惚れをした。骨の髄まで届くような唯一無二の声、吸い込まれる非対称な瞳、天性のアイドルと言われる表現力、ほんの少しの恐怖を与えるひと。ある時はくま、ある時は幼い子供のように愛されるために生まれてきたようなひと。

人を惹きつける何かを持っていて、愛に強い執着があって、繊細で純粋でやっぱりどこか儚いひと。



それからもうひとり、自分の為だと言いながらすべてをひたすらに愛すひとを知った。わたしとは真逆のようで変に親近感のある不思議なひと。誰よりもはやく幸せの糸口をみつけて、自分を犠牲にする以外の生き方を知らなかった弟たちのためにある日突然弟から兄になってしまうひと。

自分の長所も短所もちゃんと向き合って認められる強さと、涙をみせない優しさを持つひと。





いつの間にかすべてを捧げられると思える存在が7つもできた。浸食していく心の傷にわたし自身を消されないように、必死に手をとって、離れないようにつよくつよく、繋いだ手を握った。






2021、彼らの手をとって3年。



ウイルスは当たり前のように彼らの活動にも影響した。わたしが彼らと共に過ごした日々が夢のようになくなっていった。彼らもわたしも耐えられなくて泣いた。この手は確かに繋がっているのに、どうしてだろう、泣いて泣いて悔しいなあ、虚しいなあってたくさん泣いた。


それでも、いつかまた小さな宇宙のような紫色の光とその真ん中で歌う7つの宝物をみるまで、まいにち無力な自分に絶望しながら生きてみている。










わたしが彼らに出会ってからもドラマ、映画、CM、バラエティ、ぜんぶみていた。ドラマやバラエティは録画してダビングしたし、映画はパンフレットを買ったしCM関連のパンフレットや商品も買った。

アルバムやライブやグッズなど彼らへの出費の予定がない今、去年発売された彼の4冊目の写真集を買おうと決意して、今日書店へ行った。



みた感想は、寂しい、だった。


彼と出会ってからの時間はわたしが思ってるよりずっと長くて、彼という役者はわたしが思ってるよりずっと素晴らしいひとだった。



確かに彼なのに、時々彼に見えなかった。笑った顔も、右の頬骨のほくろも、ポーズの取り方も、切り抜かれた写真の中にみえるものぜんぶぜんぶ彼のままなのに。

煙草を咥えた写真がいちばん最初にあって、開いた瞬間、胸が押し潰されそうになった。


ちがう、彼は彼で、ぜんぶ彼なんだ。ただわたしが彼のことを無意識に24歳のまま閉じ込めてしまってるだけ。大人、をちらつかせる彼を知らなかっただけ。わたしが、知らなかった彼を知っただけ。


それでもやっぱり、無邪気さが伝わる写真が山ほどあって、変わってないんだよ。NOの看板の前で腕をクロスしてNOと叫んでるだろう単純な彼、愛おしいんだよ。クランクアップの時に泣いてしまうほど思い入れのある作品に出会った彼のことが愛おしくてほんの少し寂しかったあの感情と同じ。彼の成長が嬉しくて誇らしいのにどこか寂しい。19歳の彼と27歳の彼は全く変わらないのに彼という役者は世間が思ってるよりずっとずっと素晴らしくなる。




実写化王子なんて呪いから必ず抜け出して、真っ当な評価を受ける。寂しい、愛おしい、なにより悔しい、彼がどんな作品とも真摯に向き合ってきたこと知ってるから。役作りのために無理やり髭生やしたり、体重10キロ落としてアクション練習をやり込んだり、苦手なダンスを必死に練習したり、そういう人なんだよ。


実写化は大体彼にしておけばいいと思ってる制作側もそうだし、世間もそう、今にみてろと思ってるよ、わたしは。あの人の持つ魅力が多くの人に知られていつか報われるまで、

わたしも彼といっしょに時間を過ごして、歳をとって、色んな経験をして、出会えてよかったと思える物に出会って、時々間違えて、成長していきたい。





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初恋は、きらきらしてた。恋愛感情とは少し違ったような気もする。でもそれも含めてきっとそう。期待することすらなくてよかった、物理的にも心理的にも変わらない距離が嬉しかった、きっと理解されないだろうけど、わたしはずっと消えない初恋というものが彼で、山﨑賢人という人間で、心底幸せだった。いや、幸せでいる。初恋は叶わない。だから消えないし終わらないし、ずっとずっと綺麗なまま残る。



拝啓、初恋のひと

むかしも、いまも、これからも、もしかすると来世まで、愛してるよ。応援してる。幸せでいてくれ。